厄除けの無駄金

10年前、結婚を機に新築マンションを購入したのが人生最大の買い物。

東京・品川区で生まれ育っただけに「なんとしても都内に住みたい!」と考えていたが、いざ物件探しを始めてみると、あまりの高値にびっくり。
金額面でなんとか妥協できても、狭小だったり、不便な場所だったり…。

国立市のとある物件を一度見ただけで、もう「都内にマンション」の夢は早々とあきらめた。

不動産屋さんがくれたのは「多摩川渡るだけで1000万安くなりますよ」と言うアドバイス。
多摩川を隔てた神奈川県なら、マンションの価格はぐっと安くなるのだそうだ。
「たかが川ひとつじゃないか。
都内在住の肩書(?)にこだわって何になる」と気持ちを切り換え、川崎市内で物件探しを再開した。

さすがプロの言葉。
同じ程度の平米数なら、川崎は本当に都内より1000万ほど安かった。
予算に見合った物件がすぐに見つかり、いざ契約へ。

ここまでは意欲満々、ノリノリで進めてきたのだが、ローンを組む段になってから急に不安が湧き上がってきた。

今の会社にずっと勤め続けられて、安定した給料をもらえるのか?
隣人が困った人でも、分譲だからそうやすやすと引っ越せないぞ?
それまでずっとネットから情報を集めてきたくせに、分譲マンションに否定的な記事や書き込みが急に目につくようになって、ネットを覗くのが急に怖くなった。

思わず妻に不安を打ち明ける。
「人生最大の買い物だから心配になるのも仕方ないよね」と言われて気が楽になった。
そう、心配で当たり前。
不安を抱えたままでもいいじゃないか、と自分に言い聞かせて契約に臨んだ。

母からは「大きな買い物をする時は、一緒に無駄金を遣いなさい」と忠告された。
ただでさえ手付金やら何やらでお金が要るのに、無駄金を払うなんてとんでもない! 

だが、母曰く「死に金、無駄金に厄を乗せてしまいなさい」。
ローンが払えなくなる、隣人と不仲になる、と言ったマンション購入で起きるかもしれない不幸を、無駄金を払う小さな不幸に転化して先払いしてしまえ、と言う理屈だった。

忠告に従って、自分の技量には明らかに不釣り合いな高額の楽器を買った。
案の定、持て余して早々と売り払ってしまい無駄金となった。
そのおかげか、購入から10年経った今もマンション生活は快適である。

最近息子が運転免許を取り始めた。
大学に進学したため一人暮らしを始めたばかりだが、免許も必要だ。
引越し費用にだいぶかかってしまったので、免許はなんとか自分で払ってくれ、と言ってあったが、
どうやら免許ローンを利用しているらしい。
自立して、一人でも生活ができるよう、応援していきたいと思う。

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